「それは……」

 アヴェルド殿下は、国王様の様子を伺っていた。
 しかし当然のことながら、彼が助けてくれるはずもない。冷たい視線を向けているだけだ。
 それからアヴェルド殿下は、改めてネメルナ嬢の方を見た。ただ彼女も、鋭い視線を向けてきているだけだ。

「……そんなに怒ることでもないだろう!」
「……え?」
「君は、僕という王太子と関係を持てた。それだけで充分だろう。夢を見られたと思えば良かったんだ。君が余計なことをしなければ……こんなことにはならなかったんだ!」

 アヴェルド殿下は、ネメルナ嬢に対して逆ギレしていた。
 その様子は、なんともみっともない。私も思わず、表情を歪めてしまうくらいだ。

 そもそもの話ネメルナ嬢も、私との婚約の際に別れるべきだった訳ではあるのだが、それでも彼女の愛が真剣なものだったことは事実である。