すっかり委縮したアヴェルド殿下は、隣にいるネメルナ嬢からの言葉に呆気に取られていた。
 しかしその冷たい声色を察したのか、すぐに後退る。ネメルナ嬢が、怒っているのがわかったのだろう。

 彼女からしてみれば、愛するアヴェルド殿下が浮気していた訳だ。しかも、それによって起こったことによって自分の父親が追い詰められている。まったく持って、訳がわからない状況であるだろう。

 その怒りは、アヴェルド殿下に向けられることになったらしい。
 それは私達からしたら、好都合だ。彼はいくら責められても、責められ足りなくらいだからだ。

「アヴェルド殿下は、私のことを愛してくださっている。そうですよね?」
「そ、それはもちろん、そうだとも。僕は君のことを愛している」
「他の女性と関係を持っていたのですか? リルティア嬢のことはともかく、他の女とも……」