ただ私は、そんな彼の隣にいるネメルナ嬢のことが気になっていた。彼女はずっと、アヴェルド殿下を見つめている。その視線は、とても鋭い。彼女は一体、何を考えているのだろうか。

「アヴェルド、今回の件はお前の奔放さが原因ともいえる。オーバル子爵には当然罰を受けてもらうが、お前にも覚悟してもらう」
「父上、お許しください。僕はただ……」
「黙れ! この愚か者めが!」
「うぐっ……」

 国王様は、アヴェルド殿下に対して大きな声を出した。
 すると殿下は、黙り込んでしまう。父親のことをかなり怖がっているようだ。
 最早、アヴェルド殿下が罪を認めずとも関係はなさそうである。国王様は、確実に鉄槌を下してくれるだろう。

「……アヴェルド殿下、どういうことですか?」
「……え?」
「国王様が言ったことは、嘘ですよね?」