それに対して、アヴェルド殿下は焦ったような顔をしている。彼は恐らく、隣にいるネメルナ嬢の視線など気付いていないだろう。

「それだけではありません。アヴェルド殿下は、私達との関係の対価として、それぞれの貴族の税に関して融通を効かせていました。彼は自分の欲望のために、その権力を利用したのです」
「そ、そんなことは真っ赤な嘘だ! 父上、その女は私を嵌めようとしている。これは陰謀です!」
「見苦しいぞ、アヴェルド」
「あうっ……」

 必死に弁明していたアヴェルド殿下だったが、彼の勢いはすぐに収まった。父親である国王様の鋭い視線に、耐えられていないようだ。
 二人の親子関係について、私はよく知っている訳ではない。ただ、アヴェルド殿下は父親に逆らえるようなタイプではないようだ。明らかに委縮している。