「ほう? それならお前は、二人の暗殺者が何故オーバル子爵家の名前をあげたのか説明できるのか?」
「そ、それは誰かが二家に暗殺者をけしかけたからでしょう。いざという時には、私の名前を出すように打ち合わせていたまでのことです」

 オーバル子爵は、必死に弁明していた。
 彼が雇った暗殺者は、そこまで良いものではなかったようである。どのような交渉があったかは知らないが、依頼主の名前を明かすなんて持っての他であるだろう。
 そしてそういった者達は、得てして自分のことしか考えていないものだ。いざという時の保身のために、何かしらを残しているだろう。

「それならば、この契約書も偽装と言いたい訳か」
「契約書?」
「あの二人は、それぞれ嬉々として見せてくれたそうだぞ? この契約書には、オーバル子爵の名前が確かにあるとな」
「ぎ、偽装です。偽装ですとも」