結局アヴェルド殿下は、煮え切らない態度のままだった。
 彼は、何も決断できていない。私の話を、最後まで誤魔化し続けたのである。

「あれなら、いっそのこと私との婚約を破棄すると言ってくれた方が気が楽ね……」

 王城のベランダで、私はゆっくりとそんなことを呟いていた。
 婚約破棄されるということは、私の意に反することではあるが、そうしてくれた方がマシだとさえ思えてしまった。
 それくらい、アヴェルド殿下の態度は曖昧なのである。はっきりと言って不愉快だ。王族であるなら、筋の一つくらいは通してもらいたい。

「……何やら物騒な言葉が聞こえてきたな」
「……え?」
「婚約破棄だなんて、穏やかではない……リルティア嬢、兄上と何かあったのか?」
「あなたは……」

 そんな私の呟きは、人に聞かれてしまっていたようだ。