「オーバル子爵の罪など、別によろしいではありませんか。私とネメルナ嬢の婚約のことをお忘れですか?」

 アヴェルド殿下は、割ととんでもないことを言い出した。
 自分の婚約者の父親だから罪を見逃せ、彼は暗にそう言っているのだ。
 もちろん、彼自身も無茶だということは理解しているはずである。なりふり構っていられないということだろうか。

「アヴェルド、今回のことはそれと密接に関係していることだ。それはお前自身が、一番よくわかっていることだろう」
「……何のことだか」
「お前も自身の罪を認めないつもりか? どうやら私は、育て方を間違えたようだな……」

 国王様は、どこか遠くを見つめていた。
 やはり息子であり王太子でもあるアヴェルド殿下の愚行に、心を痛めているのだろう。