今回の件で割と心配だったのは、国王様のことだった。
 王太子であるアヴェルド殿下の愚行に関しては、心を痛めていることだろう。
 それで打ちのめされてしまっているということになったら、大変だ。国王様には、今回の件について厳正な対処をしてもらわなければならないのだから。

「大変なのはウォーランだな。事実を知らせたら、滅茶苦茶怒って、今にでも兄上を殴りに行きそうな勢いだった……」
「そうですか……まあ、真面目な方ですからね」
「知らせない訳にもいかないからな……さて」

 イルドラ殿下が足を止めたことで、私はゆっくりと息を呑むことになった。
 いよいよ、この件について決着がつきそうだ。これからオーバル子爵に対する事情聴取という名の裁判が、始まるのである。