「ただ、こんな埃っぽい所で申し訳ありませんね。隠れる場所なら、もっといい場所もあると思いますが……」
「それはエルヴァン殿下が来ることをわかっていたからではありませんか?」
「なるほど、僕はあなたを守る騎士の役目という訳ですか。それは少々、荷が重いですね」

 私と話しながら、エルヴァン殿下は本を取り出していた。
 それらの本を彼は、机の上に広げている。どうやら何かを調べているようだ。

「エルヴァン殿下、こちらは?」
「王国に残されている資料の数々です。これは、今から三年前の帳簿……まあ、アヴェルド兄上の不正の証拠を調べているんです」
「なるほど……何か手伝えることはありますか?」
「いいえお構いなく、これは僕の仕事ですから」

 エルヴァン殿下も、忙しくしているようだった。
 イルドラ殿下もそうではあるが、彼も立派な王子である。こんな人達の長兄が、どうしてアヴェルド殿下のような人なのだろうか。それだけは疑問である。