私はあまり、その二人と顔を合わせたくない所だ。別にここに来ている理由なんていくらでも作れる訳ではあるが、それによってあちらがイルドラ殿下の計画に気付く可能性が、ないとも言い切れない。
 という訳で、私は人目がつかない書庫で待機している。イルドラ殿下が安全を確認した後、王都にある宿屋に宿を取る予定だ。

「しかし、アヴェルド殿下は書庫などに足を運んだりしないものなのですか? エルヴァン殿下もよくいらっしゃる訳ですし」
「アヴェルド兄上は、下の弟に会いに来るような人ではありませんよ。書庫にも来ません。本を読む人ではありませんからね。まあ今日はそもそも、忙しいですからね」
「なるほど、それなら安心ですか」

 エルヴァン殿下の言葉に、私は安心していた。
 それはイルドラ殿下にも言われていたことではあるが、やはりこの書庫の主であるエルヴァン殿下のお墨付きは何よりもありがたい。これでこの書庫で、ゆっくりとできそうだ。