「アヴェルド殿下、私はあなたとネメルナ嬢の関係を容認しても構わないとは思っています。ただ、妾であるなら妾として扱ってください。それを彼女にも納得させてください。そうすることができないというなら、手を切るしかありません」
「……そんな簡単な話ではないんだよ」
「それなら、国王様に談判するしかないでしょうね。私との婚約を取り消して、ネメルナ嬢と婚約できるように説得すれば良いではありませんか」
「それができないから、困っているんだ!」

 私は、アヴェルド殿下の中途半端な態度に少しイラついていた。
 彼女を妾とすることもできない、関係を断ち切ることができない、正妻として迎え入れることもできない。先程から彼は、そうやってはぐらかしてばかりだ。
 王太子であるならば、もっと決断力を持ってもらいたいものである。何も決められない彼に、王位など渡して大丈夫なのだろうか。私は少し不安になっていた。