コンラッド王子とは幼い頃からの付き合いだ。3歳年下で友人のようでもあり弟のようでもある。コンラッドもオレを兄のように慕ってくれているのがわかる。だから、多少気心がしれていて、互いの愚痴なんて言い合うこともある。
  
 夕食後に二人で酒を飲みつつ、話をする。

「久しぶりに来れて嬉しいです。最近、忙しくて……結婚式にも行きたかったのに、父王が行くと言ってこれなかったので……」

「コンラッドが国にいてくれたら、安心だからな」

「僕なんてまだまだです。獅子王と呼ばれるウィルバートに比べたら……それよりあの王妃様のどこが良かったのか、聞きたかったんです」

 その物言いに少しひっかかる。グラスの中の酒が空になっているので、赤い液体を注いでやると、コンラッドはありがとうございますと丁寧に礼を言う。

 コンラッドの話し方は丁寧なんだが、言いたいことは言う性格なんだよな。

「なんか変だったか?」

 今日のリアンは完璧すぎるほど完璧な王妃を演じきっていた。どこが落第点だった?

「怒らないでくださいよ?退屈でつまらない女性だと思いました。教科書どおりのどこにでもいる人だと。そんな人を選ぶなんて………え?なんでウィルバートが笑ってるんですか?」

 オレはハハッと笑いが出てしまった。いや、待て、ここでリアンの努力を無駄にするな!

「いや、なんでもない。そうか。普通の王妃だったか。だけどオレの最愛の妃で、リアン意外を娶るつもりはない」

「どこが良いんですか!?」

「全部」

 即答!?とコンラッドが驚く。

「ウィルバートと親戚になりたいから、僕の妹なんてどうかな?って思うんだけど、だめですか?悪い話ではないでしょう?」

「国のためには悪い話ではないな。だけどオレはリアンだけでいいんだ」

「随分、頑なですね。頭の良い、ウィルバートならこの話の意味を理解してくれると思ったのに……なんでですか?」

 まあ、大国であるコンラッドの国から妃をもらうとなると、臣下が小躍りするくらい喜ぶだろうし、これはかなり破格の申し出だった。昔からオレに懐いていて、弟のようなコンラッドは……まさか自分の妹まで勧めてくるとは予想できなかった。

「コンラッド、そんなにリアンはだめだったか?」

「いいえ。普通の王なら完璧な王妃で良いんじゃないですか?ウィルバートがそんな王妃を選ぶことに驚いてます。そのような王妃一人を愛するとは思えません」
 
 鋭いなぁとほくそ笑む。

「だから僕の妹を滞在期間中、推しまくりますよ!なんなら国から呼んで会ってみてもらってもいい。妹は才色兼備です!」

「は!?コンラッド!?」

 怒りすら見え隠れする。なんでだ!?リアンの演技は完璧でコンラッドも完璧な王妃だと認めていた。なぜダメなのだろう。及第点だと思うけどな?

「まあ……酒を飲むか?落ち着けコンラッド」

「しばらくここに滞在してもいいですか?」

「いつも来たら長くいるだろ?わざわざ聞かなくてもいいが……どうした?」

「なんでもありません」

 なんだか嫌な予感がしたが、いつもくると長いので、普段通りといえば普段通りだった。

 しかしこの嫌な予感は当たった。