「えっ、衛藤さんに面と向かって渡すのは、その……緊張するから……っ」
かあっと、顔を真っ赤にさせて言う緒方くん。
き、緊張!? えっ、なんで!?
「ていうか、緒方くん。顔がすごい真っ赤だよ? もしかして、熱でもあるんじゃ……」
私は緒方くんに歩み寄り、彼の額へと向かって手を伸ばしたとき。
「え、えっ、衛藤さんにそんなに近づかれたら……俺、し、心臓が持たねぇ!」
叫ぶように言い、サササーっと大慌てで後ろに下がる緒方くん。
私と緒方くんの間には、軽く1メートルくらいの距離が開いてしまった。
緒方くん……いくら緊張するからって、何もそんなに離れなくても……。
「ねえ、緒方くん。ちょっと遠いから、もう少しこっちに来てくれない?」
「あっ、ああ」
緒方くんが私のほうに歩み寄り、1メートルくらいあった距離が半分ほどに縮まった。
それでもまだ少し遠いけど、まあいいか。
「それで……俺が衛藤さんに、毎日お菓子を渡してた理由なんだけど……」