「うーん。もちろん俺は、衛藤が嘘をつくような子じゃないっていうのは、分かっているんだが……」
声を詰まらせながら、先生が困ったように話す。
「こういう場合、衛藤ひとりの発言だけではどうも信ぴょう性に欠けるというか……」
信ぴょう性って! 私だけだと、信じてもらえないの?
「先生、本当なんです! 私、嘘なんてついていません」
「だが、緒方本人も一度認めてるからなあ」
「そんな。緒方くんは本当に、自分から殴っていなくて……」
「もういいよ、衛藤。座りなさい」
「……っ、はい」
フラフラと、私は席に着く。
最後は、先生に聞く耳すら持ってもらえなかった。
私ひとりじゃ、緒方くんのことを助けられないの?
好きな人の、力にすらなれないの……?
己の不甲斐なさに、私の目には涙が溢れる。