え。緒方くん、今……可愛いって言った? 思わず緒方くんを、凝視する。 「……っ、なに見てんだよ」 ふいっと顔を逸らした緒方くんに、ものすごく低い声で言われてしまった。 「ごっ、ごめんなさい」 私は、慌てて前を向く。 いやいや。考えてみれば、あの緒方くんが私に可愛いだなんて、そんなこと言うわけないよね。空耳だ、空耳。 それから私は残りのクッキーを食べ続け、気づけばきれいに完食していたのだった。