「殴ったって、やっぱり緒方はそういう奴なんだ」
「怖いなあ」
「暴力ヤンキーなんて、謹慎じゃなく退学になっちゃえば良いのに」
教室では、心無いクラスメイトの声が飛び交う。
違う。緒方くんは、何も悪くないのに。
あれは、元はと言えば私のせいなの。
私が急いでいたばっかりに、周りをちゃんと見て走っていなかったから。
あの日、私があの男の人たちに絡まれるようなことをしなければ、こんなことには……。
「……っ」
私のせいで、クラスメイトから緒方くんが悪いように言われて。
これ以上、彼の印象がますます悪くなるのは嫌だ。
「あの、先生! ちょっといいですか?」
「どうした? 衛藤」
私は、席から立ち上がる。