ぶつかった人は大学生くらいで。金髪で、耳にはピアスをジャラジャラつけている。


「あんた、どこ見てたんだよ」


もう一人の男の人も赤髪に強面だからか、すごく怖そう。


「おい。ぶつかっといて、謝罪もなしかよ」


あまりの恐怖に声が出ない私に、ぶつかった金髪の男の人がじりじりと近づいてくる。


「あ、あの、ごめんなさい……」


何とか声を出したが、私は謝るのがやっと。


「言葉で謝れば、いいってもんじゃねぇんだよ」

「そうだ。治療費出せよ、治療費!」


ここは街中で、人は沢山いるのに。


誰も見向きもせずに、通り過ぎていく。


「……」

「おい、黙ってないで何とか言えよ!」

「あっ!」


金髪の人に勢いよく肩を押され、私はよろけて道路に倒れ込む。


「……痛っ」


痛む膝を見ると、擦りむいて薄く血が滲んでいる。


「……っ」


目には、じわっと涙が滲む、


私はただ、緒方くんとの待ち合わせ場所に向かっていただけなのに。

どうして突然、こんなことに……。


「おい、聞いてんのか!?」


苛立った様子の男の人は、更にこちらに詰め寄ってくる。


私は半泣きになりながら、ただ首を繰り返し縦に振ることしかできない。


怖い、怖いよ。


お願い、誰か助けて……!