私が首を傾げると、緒方くんが使っていたまだ新品と思われる消しゴムを、半分にちぎって私に渡してくれた。


「えっ、いいの?! この消しゴム、まだ新しそうだけど……」

「いいよ。使っていれば、そのうちどうせ小さくなるから。消しゴムのことは、気にしなくていい。小テスト、お互い頑張ろう」

「緒方くん……ありがとう!」


緒方くん、優しいな。


彼の優しさに、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。


それから、先生が予告していた通り英語の小テストが行われ、私は緒方くんのお陰で事なきを得た。


「はい、終わりー! では、小テストの答案を回収して持ってきてくれ」


小テストが終わり、先生の指示で一番後ろの席の生徒がテストの解答用紙を回収することに。


私の列は、緒方くんが一番後ろの席のため彼が解答用紙を集める。


「緒方くん、さっきは本当にありがとう」


緒方くんにプリントを渡す際に、私が改めてお礼を伝えると、彼は頬をわずかに赤らめながらコクリと頷いてくれた。


「ひゃっ、緒方くん。ご、ごめんっ!」


緒方くんは、ただ手を差し出して普通にプリントを回収しているだけなのに。


目つきが鋭くなると、睨んでいるように見えてしまうからか、クラスメイトは彼にプリントを渡すだけでビクビクしている。


そんなに大袈裟に怖がらなくても、緒方くんは見た目と違って優しいし、親切なんだけどな。