音出ししてたら1年生が来た。

「あのアルトの体験にきました」

あ翔汰の弟くん。ほんとに来た。

「はーい。じゃあここ座ってくださーい。望楓ちゃんそっちの子お願いー」

よりによって翔汰の弟くんか。

「中学校で吹奏楽やってた?」

翔汰から聞いてるけど一応きいてみる。

「はい。アルトやってました」

「そうなんだ!じゃあ組み立てからお願いしてもいい?」

「はい」

てかやってたなら教えること特にない気がする。

めちゃ下手な学校出身じゃない限りは。

「音出してもいいですか?」

「もちろん。軽く音出したらなんかフレーズ吹いてみて」

ちょっと無茶振り。

自分がそんなこと言われたらまずなに吹こうって困っちゃう。

「(B♭〜)」

音が綺麗。1音だけでこんな違うって思ったの初めてかも。

「(〜〜♪有名なフレーズを吹く)」

わあ。すごい。

ゆっくりな曲ってピッチとか表現力とか誤魔化せないんだけど、圧倒されるくらいうまい。

これは惚れるな。

「すごいうまいね。私から教えることないや。むしろ教えてほしいくらい笑」

「いやそんなことないですよ。中学のときのコンクール、全然だめだったんで」

「ソロコンとかでたことある?普通に金賞とれそう」

「ソロコンはでたことあります。県大会銀止まりですけど」

県大会行けるだけすごいだろ。

しかもそこで銅じゃなくて銀なのすごいな。

「そっか。多分アルトになるね君。今年のコンクールも多分だしてもらえると思う」

高校から始める人が多いから、コンクールは基本2、3年生がメイン。

中学からやってた人とか、高校からでも上手かったら1年生からコンクールでれることになってる。

それを決めるのは先生なんだけど、これはどう考えても出るでしょ。

「そいえば君、名前なんていうの?」

翔汰の弟くんなのは気づいてたけど名前聞いてなかった。

「神楽奏汰(かぐらそうた)です」

名前似てる。

〝しょうた〟と〝そうた〟って聞き間違えそう。

「おっけ、頑張って覚える。私は、柊望楓って言います。よろしくね」

「はい、お願いします」

「このあと別の体験行く?」

「いや今日は1箇所で終わりって言われました」

「あそうなんだ、じゃああとは時間いっぱいまでアルト楽しんで!」

奏汰くんに負けないように私も頑張らないと。