わたしは、会社の屋上でお昼のお弁当を食べていた。
そこに、テツキが現れた。
「今日は天気が良くて気持ちいいな」
テツキが、言った。
「そうだね」
わたしは、応えた。
「あっ、卵焼きみっけ」
と、テツキはわたしのお弁当箱の卵焼きを取って
食べた。
「あぁ、幸せだなぁ。人の作った卵焼きを食べるのは」
「なによ。それ。それにしても、テツキは人の卵焼きを
食べる以外に幸せを感じることないの?」
「そうだなぁ。恋をしている時かな」
テツキは、言った。
「恋・・・か・・・」
わたしは、呟いた。
「そう。そういう時が一番幸せだし、生きている実感がわいて
くるかな」
「そっか」
わたしは、かるく頷いた。
「わたしも恋をしているよ」
「誰にだい?」
「教えない!!」
「なんだよ。それ。教えてくれてもいいだろうに。
ま、いいや。おい、もうそろそろ仕事の時間だぞ。
俺、先に行ってるからな。じゃぁな。卵焼き、ご
ちそうさん」
「どういたしまして」
テツキは、屋上から去っていった。
「鈍感・・・・・・」
わたしは、空を見上げ小さな笑みを浮かべながら
そう呟いた。
END