確か、放課後、南校舎の離れ校舎三階、三室並んでる真ん中の空き教室。クラスのプレートがある方の扉を三回ノック。後ろの扉を二回、そしてもう一回プレートがある方の扉を四回ノック。後は……向こうから開くのを待てば…………良かったはず。
と、考えていれば何か用?と背後から声をかけられ驚いて振り返れば【離れ校舎の日本人形】と呼ばれる腰までの黒い真っ直ぐな髪の女生徒がたっていた。
「ここ、一見さんお断りなんだけど……貴女……その上靴の学年カラー……赤ということは1年ね?なんで利用方法知ってるの?」
この教室の主より先にきて、利用方法と言うノックをした、私の上履きをみる。赤が1年、青が2年、3年が緑1年の私に誰かの紹介?それとも情報流出?と綺麗な日本人形みたいな顔を歪めるこの教室の主。
彼女を目にして安堵の息を吐く。入学式当日からこの教室が開いてるかどうかはさだかではなく、今日開かなければ明日、再び来る予定だった。
「ちょっとしたつて。【あの日枯れた花の色は】」
そういった私に本当に日本人形みたいな綺麗な瞳にじっと見つめられる。彼女の容姿は美しすぎてゾッとする……着物を着せてガラスの箱に入れて立たせていれば本当に日本人形になるんじゃないか…………いな、日本人形が自我を持ってガラス箱から抜け出して動いてるんじゃないか。なんて思ってしまう。
「そう、でも残念……あの日枯れた花の色は…………まだ蕾をつけない」
しばらく私の顔を見つめてそう口にした彼女はこのゲームのお助けキャラ。
【放課後、南校舎の離れ校舎三階、三室並んでる真ん中の空き教室。クラスのプレートがある方の扉を三回ノック。後ろの扉を二回、そしてもう一回プレートがある方の扉を四回ノック。後は向こうから開くのを待ち、そして、「あの日枯れた花の色は」と言えば】彼女が攻略対象者の好感度を色で教えてくれるのだ。
「○○の花は~~」に続き
まだ蕾をつけない。は好感度0~20
淡く白いつぼみをつけた。は21~40
蕾は青い花を咲かせた。は41~60
花は蜜をつけ綺麗に咲いた。は61~80
花は摘みどき、誰に咲かせる?。は81~99
あの日枯れた花は貴方の胸に咲いた。が100
六段階の好感度があり、淡く白い花を咲かせた時点で彼女に話しかければ、くれるアイテムが誰に有効かはランダムだが、好感度をあげるアイテムを一日一回くれるのだ。そんな彼女も実は友情ENDを迎えられる攻略対象者である。
「でも、雨に濡れた桜、椿、の花は色づき、雨は梅、菊の花を咲かせた」
「え?」
何そのセリフ……知らない。隠し要素かなにかだろうか?そう思いつつ私は【離れ校舎の日本人形】と言う呼び名が着く彼女、坂口 彩葉さんに話しかけた。
「あの、坂口さん……もし良かったら、私と友達になって貰えないかな……」
「私と?」
「うん。が、学年が違うからその……無理に、って訳じゃないけど……」
「…………うん。仲良くしてくれたら嬉しい……私、3年の坂口 彩葉。彩葉って呼んで。私は……千春って呼ぶから」
「嬉しい!よろしくね!彩葉!」
「お近付きの印に……【 [[rb:ライター> こ れ ]]】あげる」
「ライター?」
「なにかに役立つはず……」
好感度アイテムと言うことだろうか。そう思いながら今日は彩葉と別れて帰り道を歩く。まさか、お近付きの印と言うライターをくれるだなんて思わなかった。いったいライターなんて誰が使うんだろう。
黒梅先生は吸わなさそうだし……まさかのお姉ちゃん?いやいやまさか、でも、思い当たる人物は…………いないし……。いわゆるハズレアイテムと言うやつだろうか?と、歩いていれば舌打ちが聞こえ思わず足を止める。
舌打ち、どこからだ?と周りを見渡せばタバコケースを片手にポケットを漁っている男性が見えた。タバコを手にしていて、何かを探している…………それはつまり…………ライター!と、手にしていたライターに視線を向け、そして男性に声をかける。
「あの……これ、もし良ければ」
「あぁ?なに?超名門校の此華咲夜学園の学生が喫煙者?」
「あ、いえ!くじで当たっちゃって?」
「へー。そう……まぁ、有難く使わせてもらうわ…………で?俺はあんたの事学園に黙ってればいーの?」
その言葉に首をかしげれば、まじでくじ引きなの?と聞かれ苦笑する。未成年の喫煙は法で禁じられておりますから。と言えばふーん。と疑いの目を向けるが直ぐに視線をたばこケースに逸らした。
「まっ、いーけど?じゃ、これ、ありがとなー」
そう言って路地裏に続く細道に入っていく男性に続き私は止めた足を再び動かした。