ーーーー始業式の日


「久しぶり〜!夏休みどうだった?」


私の親友、須谷壱花(すたにいちか)ちゃん。みんなからいっちゃんって呼ばれてる。


「いっちゃん久々〜!ほぼ部活漬けでしたよ笑」


いっちゃんは美術部だから引退はしてるんだけど、文化祭に向けて作品は家で作ってるらしい。


「そっかーそういえばきいて!彼氏と夏祭り行ってね、キスしたの!!ドキドキした〜!」

「え!?まじ?おめでと~!幸せもんだね」

「ちょー幸せ!恋奈ちゃんも好きな人とかいないの?」

「んー全然。高校生で恋人できないとかちょっと寂しいんだけど」

「じゃあ気になる人とかは!この人いいなーみたいな」

「気になる人とかもいないから困ってるの!笑」


これは嘘ついた。ほんとは渉くんのことが少しだけ気になってはいる。

そんなこと言ったらいろいろ聞き出されちゃうから言えない。

ほんとに自信持って好きって言えるようになるまでは誰にも言わないつもりなんだ。


「おー久々!課題ちゃんとやってきたか?」


この人は同じクラスの耶麻燿(やまひかる)くん。

渉くんのお兄ちゃんなんだ。

元私の好きな人。燿くんに彼女ができたから諦める運命だったの。


「ちゃんと終わらせました〜。しかもテスト勉強までしたから!」


私は勉強ができないわけじゃないと思うけど、めっちゃ上を目指してる程でもない。

めんとくさくて勉強は嫌いだから。

「えらいじゃん。あ、もうすぐ式始まるから体育館行かんと!」

「もうそんな時間か!いっちゃんも行こ!」