「はよー。俊、朝から元気だな。……ふぁ、ねみぃ」
渡辺くんへのいじりがエスカレートし、だんだんクラスの雰囲気が悪くなった。
そんな時、気だるげであくびまじりの声が頭上から聞こえたので、顔を上げた。
そこには、ノースこと北岡 翔くんがいた。
背後に彼がいて、私の胸はトクンと高鳴った。
「だって、このデブ朝から汗かきすぎでキモいんだぜ?」
「そのキモいって言ってる奴の腹を自分から掴んでどうすんだよ、くだらねぇ」
じとっとした目で北岡くんが言うと、川本くんは不機嫌な顔で「チッ」と舌打ちをした。
近くにあった机を蹴ると、イライラしたまま自分の席に戻った。
北岡くんは、乱暴者でクラスを牛耳ってる川本くんに対等に渡り合える数少ない人だ。