……ん? この人、私のクラスの黒木くんに似てない? 貴族のような服を着た男性は西洋風の顔だけど、なんとなく似てるっていうか……幼くして日本人っぽく寄せて、黒髪黒目にしたら、彼っぽいんだけど?

「私は信じません。婚約者である彼を信じています。本人に会わせてください! きっと、何か勘違いがあるはずです!」

 私……っていうか、重いドレスを着たお姫様はスカートの裾を持って早足で歩き出した。

 なんとなく彼女の記憶が伝わって来て、私にはわかったことがある。

 今現在、このお姫様の立場は絶望。スパイに情報が売られて父王は殺されて、今にも敵国が城へと攻めこんで来そうな状態。

 そして、お姫様の婚約者である公爵令息が、今はスパイではないかと疑われている。

 っていうか、お姫様以外の全員がそうだと確信していた。

 何故かというと、身内でないと知り得ない情報を敵国は知っていて、お姫様の婚約者はこんな状況になっても姿を現さない。

 けれど、お姫様は一人だけ彼を信じていた。彼のことを愛していたからだ。

 目の前の大きな扉が開いて、一人の男性が現れた。彼は抜き身の剣を片手に何かを叫んだ。

 彼の名前を呼んだお姫様は、その瞬間、胸を矢で射貫かれていた。

 そして、視界はまっくらになった。

 そして、私がここで言いたいのは、目の前の男性……その人が、あの藤崎くんを大人っぽくして……西洋風にした感じの男性だったってこと。