私は雲ひとつない、窓の外の抜けるような青い空を見た。遠くの方に入道雲らしい白い雲も見える。

 あー……本当に夏が来たんだなーなんて、そんなことを思いながら、階段を上がっていた。

「……美波ちゃんっ!?」

 私は右前を歩いていた絵里香ちゃんが振り向いて名前を呼んだ時には、完全に身体が傾いで自分ではもう取り戻せなかった。

 高い悲鳴が聞こえる。

 これって、私……? それとも、絵里香ちゃん?

 ……わかんない。とにかく、今わかっているのは、身体が浮いていることと、自分が漫画みたいに足を滑らせて階段を落ちたことだけ。


◇◆◇


「そんな! あのお方が……そんな事をするはずは、ありません!」

 夢の中の私は、西洋風の世界でのとあるお姫様だった。豪華なドレスを着た彼女の中に入っていることはわかるんだけど、身体が自由に動かせず、話すことも出来ない。ただただ傍観者だった。

 煙の上がった街が、遠くに見えていた。今は戦争中なのかもしれない。

 彼女は泣いていた。

「しかし、……姫。婚約者であるとは言え、彼がこの国を売ったことに間違いありません」