藤崎くんがファーストフードの店に入り、私の分の飲み物を買ってくれると、静かに話し出した。

「……前世のことなんだけど」

「うんっ」

「どこまで記憶を、取り戻している?」

「あ。えっと……そうだね。亡くなった時のことだけだよ」

 だから、藤崎くんのことをずっと怖い人だと思っていました。それを察した彼は、大きく息をついて話し出した。

「俺はね。結構戻っている。猫塚が亡くなった後も、ずっと生きていた。あの世界では自ら命を断つと生まれ変われないって言われていて……老衰で死ぬまで生きていた」

「そうなんだ」

 私は軽く頷いた。

 あの時、今にも国が滅ぼされんとしていた時だったけど、藤崎くんは助かったんだ。

 良かったなあって思った。お姫様は婚約者のことをすごく好きだったし、好きな人が長く生きていてくれた方が良いだろうってそう思うし……。

「……前世の記憶って……記憶では俺なんだけど、自分でもないって思うよね。俺は確かにここで生まれ変わったんだけど、前世では猫塚の前世の人のことを愛していたんだ。すごく……けど、誤解されたまま亡くなったという後悔の念は、ずっと残っていた」