「では、間違いだとわかっていながら、猫塚に俺に近づくなと言った?」

 二人はしばし睨み合い、黒木くんはふうっと大きく息をついた。

「帰ります。お二人で前世の記憶でも語り合ったらどうですか。感動の再会でしょうし」

 黒木くんは気に入らない様子で、私の横をすり抜けて行った。

 にっ……逃げたんだよね? 藤崎くんの言っている事に、反論出来ないから?

「……猫塚」

「はっ……はいっ」

 黒木くんの背中が完全に見えなくなるまで黙って見ていた藤崎くんは、私の名前を呼んだので、ビクッとしてしまった。

 さっきまで怒られていたのは私ではないんだけど、迫力が凄くて怖かったんだよね。

 けど……藤崎くんが怒る理由もわかる。だって、彼は裏切られたと思っていたままに、婚約者を殺されてしまっていたんだもんね。

 それって、前世の私の話らしいんだけど。

「話せる? 今から」

「うっ……うん!」

 そして、藤崎くんは歩き出したので、私は彼の背中を追った。

 今まで私のことを殺したとんでもない人だと思っててごめんなさい……っていうか、藤崎くん背中も格好良い……。