「それに、僕は前世でも裏切ったつもりもない。あの時期に王軍が出兵することは、誰だってわかっていたはずだ。国が滅んだことだって、僕のせいにされれば堪らない」

 前世の中でスパイが居て、情報が漏れて、そして、王様は殺されてしまって、もう滅びる寸前だった。

 そして、信じていた婚約者が帰って来た途端に、お姫様は殺されてしまった。

「ああ。そうだろうな。だが、何故かスパイの疑いを掛けられていた人物が俺だと言うことになっていたな。それを証言したのは、確かお前だっただろう。あの後、黒木はすぐに亡くなってしまった……前世、有耶無耶になったままだった事を、今ここで問う。何故、俺の名前を出した」

 藤崎くんがとても怒っている理由。私も理解した。藤崎くんはスパイではないのに、スパイだとされた理由が黒木くんの証言だったって事?

 それは怒っても、仕方ないと思う。

「それは……誰しも間違いはある事です」