「何が不可抗力だ。猫塚の前世の記憶が戻ったことも知っていたな? どうして、何も言わなかった? 俺でなくても、言える人間は居ただろう」

 藤崎くんは怒っている。黒木くんが私の記憶について黙っていたから?

 ……ううん。私には藤崎くんと話したことないって言っていた。私にも危険な男だから、近寄らない方が良いって……けど、藤崎くんは黒木くんのことを知っているみたい。

 これだけで嘘だとわかってしまう。

 最初黒木くんと話した時に記憶が戻っている人が、この中学校内に他にも居るって言っていた。

 けど、それは私にも言えないって……名前がわからないと、私は確認することも出来ないもんね。

 最初に前世の記憶が戻ったことを知っている、黒木くんの言い分を信じるだけになってしまう。

「……黒木くん。私には、藤崎くんに近寄らない方が良いって言ったよね?」

 私がふるえる声で口を挟めば藤崎くんはより怒ってしまうし、黒木くんの細い目はより細くなった。

 前世のことだって……わかっている。私たちは現代を生きる中学生で、前世なんてもう意味は持たないってことはわかっている。