「……聞けません。だって、前世の黒木くんとあのお姫様が付き合っていたなんて、思えないもの。婚約者のことを愛していたから、信じていて……裏切られて殺されたのに、どうして、他の人と付き合ったりするの」

 振り向いた私は真っ直ぐに黒木くんのことを見た。黒木くんだって、矛盾していると自分でも思って居たのか、にがい表情を顔に浮かべていた。

「それは、色々事情があるんです。話を聞いてくれれば、わかってくれるはずです」

「嫌って言ってるでしょう。だって、今思うと黒木くんが藤崎くんを危ない男だから近付くなって言って居たでしょう。私は亡くなる一歩手前しか思い出していないから、わからないけど……どうして、そんな事を言ったの?」

 前世は前世で、藤崎くんは何も思って居ないかもしれない。

 けれど、やたらと藤崎くんに警戒心が湧いてしまったのも、そういえば黒木くんの話を聞いてからだ。

「それはね……この男が、隠していることがあるからだよ」

 声が聞こえた方向を見ると、そこには藤崎くんが居た。

 見るからに怒っていて……多分彼が怒っている対象ではない私も、逃げ出したいくらい怖い。