「それは……その」

「うん。何?」

 早く聞きたい。早く教えて欲しい。そんな思いで黒木くんを見つめると、彼はなぜか照れている様子だった。

「実は……猫塚さんと僕は、付き合っていたんですけど……覚えていません?」

 私はそれを聞いて、ぽかんとしてしまった。

 何々……そういう雰囲気なんて、今までひとかけらもなかったよね?

「え。だって、そんな訳ないよ。あのお姫様……前世の婚約者のことが、好きだったからずっと信じてて、それで最期に裏切られたんだよね?」

 そんな人が違う人と付き合ったりするだろうか……絶対、おかしいよ。

 私は彼女の中に居たから、わかる……お姫様は婚約者のことを愛していたし、彼を信じていた。信じていたのに裏切られた……すごく傷ついていた。

 私ではないから、まるで他人事のようではあるけれど、生々しい感情は伝わって来たので、そんな状態の彼女に他の人と付き合う余裕なんて、あるはずがない。

「いや、それは……」

 黒木くんは言い返したことに対して、すごく動揺しているようだった。

 私はそんな彼を見て、なんだかおかしいと感じていた。

 今までずっとなんとなく、黒木くんって私の味方だと思っていたけど……前世の記憶では、黒木くんっぽい前世の彼に対して、どういう感情を持っていたんだろう。