ううん。もしかしなくても……藤崎くんって、私の婚約者だった時の記憶、思い出してない!?

 私は口の中がカラカラになりながらも、何の見返りもなく勉強を教えてくれる藤崎くんとの時間を乗り切った。

 誰がどう見ても挙動不審だと思われるような態度で、ありがとうとさよならを言って、私は帰り道を歩いていた。

 終わった……! 嬉しい! 不審人物と思われそうだけど、空に向かって両手を挙げてお祝いしたい気持ちで一杯だった。

 けど……あの態度だと、藤崎くんも前世の記憶を思い出しているってことだよね?

 ……しかも、ここで物凄く勘違いしていなければ、私の前世の記憶を戻っていないかを、良く確認しているようだった。

 もしかして、私……また殺されない? あの時に周囲の人は裏切ったと言っていたけど、お姫様は信じますって言ってて……結局、殺されちゃったけど……。

 どういうことだろう。

 前世で追い掛けて来てしまうくらい、私のことが憎らしいとか……?

「……猫塚さん!」

「え。黒木くん。こんにちは?」