藤崎くんの実力は、今日の数学の時間で実証済み。先生も正直『まさか解けると思ってなかった』みたいな、失礼な表情をしていたもん!

 すっごく頼りになる家庭教師であることは、間違いない。頼んだのはこっちだし、今更断るのもおかしい。

 だとしたら、家庭教師してくれる時間を有意義に使わせていただきます!

「……それじゃあ、今日も始める?」

 私は机の上に教科書参考書などを開いて、鞄を近くの机の上に置いた藤崎くん待ちの体勢になった。

 え。近付いて来た藤崎くん良い匂いする……香水とかでもない……なんだろう。この匂い。なんだか、懐かしいような……。

「猫塚さんって、部活入ってないの?」

 藤崎くんは筆記用具を出しながら、なんでもない世間話を切り出した。藤崎くんは昼休みバスケをして楽しんでいることからわかる通り、バスケをずっとしているらしいんだよね。

 ということを、私が知っているというのもおかしいのかもしれないけど、藤崎くんは人気者なのでそういう情報を集めていなくても集まるのだ。

「え! ……あ。うん。入ってない。帰宅部だよ」