「……猫塚さん。待たせた?」

 放課後、私はドキドキしながらA組の藤崎くんを待っていた。

 教室の中には私一人。今はテスト前だから、県大会へ進んだ運動部以外の部活だって、ほぼ休みなのだ。

「待ってないよ。ありがとう。今日もよろしくお願いします」

 私は走って逃げたい気持ちを抑えつつ、待っていた。

 だって、数学を頼まれて教えてくれているだけで、本当にありがたいという気持ちしかないんだよ。

 ……私の心の中にある微妙な問題は、まあ置いておくにしても。何。前世の記憶って。自分でも意味わかんなくて、説明しづらいこの気持ち。