その人が良いよって言わないと言いたくないって、それはそうだよね……誰だって言われたくないことはあるはずで、当の本人が言えないというものを聞き出す訳にもいかない。

 個人情報の保護は大切。

 それに、別にこういう話をしたい訳でもなかった。

 ただ、あの前世は本当で、私たちは前世にも会っていたんだって……。

「うーん……それもそうだよね。その人が知られたくないかもしれないし……けど、正直前世のことだしって思っちゃう。私たち、今は普通の中学生のはずだもん」

 前世がどんな関係であろうが、私たちは今現在現代日本で生きる単なる中学生で、何も出来ない。

 前世王族でした貴族でしたって言ったところで『ふーん。それはすごいね』で終わっちゃう。だって、履歴書に前世なんて書く欄はない訳だし。

 私が肩を竦めれば、黒木くんは確かにっていう様子で頷いた。

「……前世の猫塚さんの婚約者だった、あのやばい男も居るよね。藤崎は僕も話したこともないし、近寄りたくもないから、記憶があるかないかは知らないです。今はただの中学生だとは言え、危険な男だったので」