私は廊下に出て出席番号順に並んだ。ここで整列が出来れば、A組から出発して順に体育館に向かって行く。私たちはC組なので、ここで待っている事しか出来ない。

 そして、私が今一番に気になる人物、黒木くんの姿が目に入った。あの目が細い狐顔……特徴的なあの顔が夢の中に出て来てもおかしくないよね。

 パッと彼と目が合ったけど、黒木くんは、なぜかわざとらしく視線を逸らした。

 ……どうして、そんなに思わせぶりなの?

 もう決めた。これは、聞くしかない。本人に。

 私はそう決めた。ええ。決めました。何言われても気になるから、もう本人に直接聞く。

 言いたい人は中二病でもなんでも、なんとでも好きに言えば良いと思う。けど、私はこれから中二病を公言して生きることにする。

 気になっていることを気になっているまま解決せずに生きて行くなんて、絶対に無理。

 集会が終わり、列がばらけて各自教室へと帰りだした時、私は一人で前を行く黒木くんの肩を叩いた。

「ねえ。もしかして、婚約者に裏切られて亡くなったお姫様に私似てない?」

 校長先生の退屈な話を聞きながら、私はずーっとこの聞き方について考えていた。これならばギリギリのラインで、お姫様願望女子ではないかと思って貰えるかも知れない。

 黒木くんは細い目を細めて、噛みしめるようにして呟いた。

「やっぱり、思い出したんだ……猫塚さん」

 そして、私と黒木くんは立ち止まって、黙ったまま見つめ合った。