「うん。私後ろの席からずっと見てたんだけど、美波ちゃんすっごく悩んでいるのがわかって面白かったよ」

 言葉の通り、面白かったと思って居そうな絵里香ちゃんは、悪気なく言った。

 人を楽しませることが出来たなら、私の悩みにも意義があって……なんて、そういうあれでもなくて!

「うん。そうなんだよね……実は、気になっていることがあるんだけど、当人には聞けなくて……」

「え。そうなの? 美波ちゃんって、なんでもすぐに相手に聞いちゃいそうなのに……あっ……そういえば、美波ちゃんに良いニュースがあるんだけど……」

「え? 何々?」

 絵里香ちゃんが何か言いそうになったところで、ガラッと引き戸が開いて、担任の先生のダミ声が教室に響いた。

「集会があるから集まれー」

 二時間目の終わりに、たまに校内集会がある。それが今日だったみたい。

 これから全校生徒が体育館に集まらないといけないし、出席番号順だから熱塚と吉沢は離ればなれになるしかない。短い別離の瞬間。

「あ。今日、集会あるんだ! 後から言うね!」

 そう言って、機嫌良さそうな笑顔の絵里香ちゃんは奥の扉から去って行った。