昨日、階段から落ちた私を助けてくれたらしい黒木くんにお礼を言いに行こうかと思ったら、彼は友達何人かと連れだって教室を出て行くところだった。

 黒木くんたちは、何処でお昼食べているんだろう……お弁当持っていないってことは、購買組なのかもしれない。

 もしかしたら何処かで見掛けたことがあるかもしれないけど、正直に言ってしまうと、好きな人以外の情報は頭を素通りする。

 なかなか、お礼を言うタイミングが見つからない。けど、同じクラスメイトって言っても、黒木くんと話したことなんて、数回あるかないかなんだけど。

「美波ちゃん。今日も校庭行く? そろそろ暑いよね」

 確かに気温が上がりだして外は暑い。暑いけど、藤崎くんを見るためなら耐えられる。

 けど、友人絵里香ちゃんは私に付き合ってくれているだけで、優しい彼女に暑い思いをさせたい訳でもなかった。

「どうしようかな……あ! あの屋根の下なら影になるしあの場所はどう?」

 私が指さして示した渡り廊下の隅は、日向になるとじりじりと肌をあぶられる太陽光から私たちを守ってくれそう。