お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

大和の家、烏丸家も旧華族だが、なぜか西蓮寺家に尽くしており、代々社長秘書から副社長に就いている。大和の兄の悠士も、俺の兄の秘書を務めた後、副社長に就任する予定らしい。

しかし俺だけは何も決まっていなかった。伊乃国屋の社長になりたいとは思っていなかった。だから、大和に正直な気持ちを伝えることにした。


「はっきり言って、何をしたいのか分からない。お前は、自分が好きなことをすればいいよ。」

「僕は雅と仕事がしたい。それが何であろうと。僕はかなり有能だよ、だって烏丸だからね。僕の情報網と人を見る確かな目は貴重だよ。まだ時間があるから、ゆっくり考えればいいよ」


にっこりと歯を見せて笑う大和。

そうだ、元カノに関する嫌な情報を教えてくれたのも大和だった。幼い頃から兄弟のように育った大和は、家族の一員として何でも話せる存在だ。

兄の京も悩んでいる俺にアドバイスをくれた。


「俺自身は社長にこだわっていないんだ。もしおまえが伊乃国屋の社長になりたいなら、大学卒業後に3年かけてその地位に就任できるようにしよう。ただ、食べることが好きな俺たち家族の会社を畳むようなことは避けたい。おまえが他にやりたいことがあるなら、全力でそれをやれ。もちろん、俺にできることがあれば協力するよ。何をしたいかわからないなら、まずは自分の好きなことを挙げてみたらどうだ? その中に職業としてできるものがあるかもしれないよ。」


そんな中、あの夢の出来事が起こった。

あの子が言った言葉が俺の人生を変えてくれた。


『ミャーね、お菓子が好きだから食べると嬉しくて笑うの。みんなにも笑ってほしいから』


この一言で、自分が甘い物好きであることを再確認し、伊乃国屋では扱っていないお菓子専門の輸入会社を設立しようと思った。いずれは、そのお菓子に合うコーヒーや紅茶やハーブティーを取り入れたカフェ経営も。

大和は大喜びで一緒にやると言ってくれ、兄を含む家族も大賛成してくれた。

慶智大学を卒業後、父親の会社『伊乃国屋コーポレーション』で3年間働き、25歳の時に夢だった輸入菓子の会社『株式会社BON BON』を設立し、現在に至る。


俺のお姫様は今いくつになったのだろう?
お菓子屋をまだやりたいと思っているだろうか?
もしかしたら、パティシエになっているかも?
俺との約束を今でも覚えているだろうか?