お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

翌日、父さまが朝の散歩をしている間に朝食の準備をする。実家では毎週末、少し豪華な洋風朝食を楽しむ。

今朝はドイツの白ソーセージ、数種類のハム、スクランブルエッグ、庭で採れた秋イチジクとヤギのチーズを生ハムで巻いたものが並ぶ。

さらに、近所のパン屋さんに特別に作ってもらったプリッツェルと、お豆腐屋さんの出来立ての豆乳も用意する。

コーヒーはもちろん南ドイツのBayern Kaffeeを父さまが淹れてくれる。

母さまはその間、イチジクの収穫をし、ご近所に配り回っている。





父さまが雅さんと一緒に戻ってきて、みんなで朝食をいただいた。

昨夜も思ったけれど、なんだか不思議な感じ。雅さんが実家で一緒に食事をするなんて。でも、この風景が妙に馴染んでいて、まるで当たり前のように感じてしまう。



食後、雅さんは涼介先生に連絡し、私たちが車に乗り込もうとしたとき、母さまが大きなクーラーバッグを渡してきた。

えっ、何よ?
今から引越しをするのに、何で大きな荷物を渡そうとしているの?


「これを持って行って。うちで採れたイチジクよ。美愛ちゃんが好きなんだものね!」


ニコニコ顔の母さまが渡そうとするが、私は受け取らない。

まじですか?
マジですか?
これから引っ越しに行くんですよ!
しかも、この量‼︎


「えっ、こんなにたくさん? これから引っ越しするのに」

「だから、クーラーバッグに入れたのよ。美愛ちゃんが作るイチジクのジャムは、とても美味しいのよね。ジャムを作ったら、持ってきてね〜」


やはり、私にジャム作りを促していたのね?
でも今日は無理、いやだ。
いつもなら言い負かされてしまうけれど、ここは強く出ないと。


「もー、だからこれから引っ越しをするって言っているのに」


私が不満そうな態度を取ったとき、仲裁役が現れた。