お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

初出勤の朝、私は就業時間の30分前に到着し、そのまま副社長室へ向かう。烏丸副社長は、すでに出勤されていた。


「副社長、おはようございます。今日からよろしくお願いいたします」

「あっ、美愛ちゃん、おはよう。僕はみんなのことをファーストネームで呼んでいるから、今日から花村さんは美愛ちゃんね。ごめんね、30分も前に来てもらって。明日からは規定通りで大丈夫だからね」


この日は、さまざまな手続きや各部署への挨拶。そして、社長秘書の仕事内容の引き継ぎを始めた。社長は午後から出社するそうだ。    

秘書室には副社長秘書で、室長の大河内美奈子(おおこうち・みなこ)さん、そして五人の部長たちをサポートする国立静子(くにたち・しずこ)さん、元原夕太(もとはら・ゆうた)さん、野近千保(のぢか・ちほ)さんがいる。
 
大河内さんはベテラン秘書で大学生の息子さんがいるアラフォーのお母さん。以前は伊乃国屋で社長秘書をしていたようだ。
前社長退任後、Bon Bonに移られた。

国立さんは現在妊娠6ヶ月で、あと3ヶ月で退職する予定。

元原さんと野近さんは慶智大学卒で、イケメン部長5人組と同級生で同期だそうだ。実は二人とも優秀なプログラマーで、いずれは Bon Bonでサイバー関係の業務を担うらしい。

普段は人見知りで慣れるまで時間がかかる私だけれど、秘書室の皆さんの明るく優しい雰囲気にすぐに溶け込むことができた。





BON BONには社員食堂はないが、広々としたブレイクルームがあり、お弁当を持参する人もいるようだ。

この7階フロアの南北両側には、ちょっとした空中庭園がある。ここでお弁当を食べれば、ピクニック気分を味わえる。

今日は秘書室のみんなで、サクラスクエアにあるパスタ屋さんへ行った。





午後、社長が出勤されたのでご挨拶に伺い、副社長が私を紹介してくれる。


「社長、こちらが花村さんです。この2日間、彼女に私のサポートをしてもらい、大まかな引き継ぎを行います。マニュアルも彼女に渡しますので。」

「は、はじめまして。本日付で入社いたしました、花村美愛と申します。1日でも早くお役に立てるよう努力いたします。どうぞよろしくお願いいたします」