お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

この時間なら、まだ美愛ちゃんが起きているかもしれない。最近はプライベートであまり話す機会もなく、美愛ちゃん不足になっている俺。起きていても、俺がお風呂に入っている間に、いつも寝てしまう彼女。

以前はプードルのBon Bonを枕元に置いて寝ていたが、ここ最近はBon Bonを抱きしめて寝ている。何も言わないが、やはり寂しい思いをさせていることが分かる。


ごめんね、もうすぐ完成するから。


2日後の金曜日には完成した指輪をホテル9(クー)内の店舗へ受け取りに行く。だから、今週末にもう一度プロポーズさせて。そして、俺が君だけのために作った指輪を、『愛を深める』という意味がある左手の薬指にはめさせてくれ。


心の中でこっそり謝りながら、しばらく彼女の愛らしい寝顔を眺め、そっと触れるように口づけをする。起こさないように、俺と同じシャンプーの香りがする美愛ちゃんを抱きしめて、眠りについた。





この日俺は朝から非常に機嫌がいい。金曜日、今日は完成した指輪を受け取る日。最後にもう一度だけ、彼女に罪の無い嘘をつく。


「美愛ちゃん、おはよう。午後は田島ペーパーの副社長に会いに行って、そのまま食事に行く予定だよ。」

「わかった、夕飯はなしね。田島ペーパーの副社長って、雅さんの先輩なの?」

「そう、慶智大学のね。彼はアメリカから帰国して、副社長に就任したんだ。今日は二人で、お祝いも兼ねて食事をするんだ。」


この会話はすべてウソではない。カフェBon Bonの紙カップを田島ペーパーと契約し、先日副社長に就任した田島先輩をランチに誘ったから。それが今日ではなかっただけ。



この日は珍しく、夕方までオフィスにいることができる。美愛ちゃんのお弁当を断り、昼食の時間をずらして、ここから近くの裏通りにある商店街の喫茶Bonへ向かう。