「澪。少し待ってって」

 重い通学バッグを持って早足で歩く私と、手ぶらでリーチの長い行高との競争なんて、ほんとすぐに決着がついてしまう。

 靴箱の前で、ぐいっと肩を引かれてしまった。

「なんで? 助けたつもりだったけど、俺間違えた?」

「ううん。間違えてない。けど」

 なんだろう。鷹羽くんのことが好きになりかけているのは認めるのは難しい。恥ずかしい。それを、行高には言い難い。

「あいつと……もう付き合ってるって?」

「付き合ってない。けど、正直、気になってる」

 気になっている。別に一番最初に告白されたからって訳でもなくて、鷹羽くんが私のことを好きで居てくれて、それなのに、よくわからない態度を取られてショックだった。

 けど、理由を聞けばそれも仕方ないと思った。