「わからないよ……」

「有馬」

「鷹羽くんみたいな人には、わからないと思うけど……」

「僕が何?」

「……すごくドキドキする……鷹羽くんは慣れてると思うけど、私は全然慣れてなくて上手く言えない」

 無言で私の手を取ると、鷹羽くんは私の手を自分の左胸に当てた。ドクドクと脈打つ鼓動が手に感じる。顔と触れている手に血が集中していって、もうどうして良いかわからない。

「僕もすごい緊張してる……わかってくれる?」

 それをした驚きで何も声が出なくて、ただ何度か頷いた。

「有馬がなんでそんな風に思うのか、わからないけど、慣れていることなんて、全然ないよ」

「……うん、ごめん、手離して」

「あ、ごめん」

 鷹羽くんの手はぱっと離された、私の手を包んでいた大きな手の感触が残っていた、思わず胸は高鳴ってしまった。

 これが、誰かのことを好きって気持ち? それとも、鷹羽くんが好きになってくれたから揺れているだけ?

「いきなり、触ってごめん。怒った?」

 気遣うように覗き込んで来た鷹羽くんに私は首を横に振る。

「怒ってない……けど、びっくりした」

「そっか、じゃあ……帰る?」

 こくんと頷いて、私は薄暗くなった帰り道を歩き出した。そろそろ辺りは暗くなってきた。

 薄紫の空に、黒が混じり始めている。

 気がついたら自分の部屋のベッドの上でジタバタ転げまわっていた。

 恥ずかしい、嬉しい、いっそ溶けてしまいたい、

 複雑な気持ちが入り混じって、もうめちゃくちゃだ。あれから帰り道、何か鷹羽くんと話した気もするんだけど、あんまり覚えていない。

 夕食の時もリビングでテレビを観ている時も何回もため息が増えて、親には首を傾げられた。