「……有馬!」

 バタバタと慌てた足音がして、血相を変えた鷹羽くんが不良の手を払って私を背に庇った。

 私は泣き出しそうな目をこすって、彼の後頭部を見上げる。

「あれ。もしかして、お兄さんが代わりにお金払ってくれるの?」

 不良たちは鷹羽くんがここに来てくれたとしても劣勢には変わりないとでも言いたいのか、にやにやといやらしい笑みを浮かべていた。

「払いませんよ。大声出して、人呼びますよ」

 冷静に言った鷹羽くんが挑戦的に三人を見回すと、これは言いくるめられないと判断したのか、チッと舌打ちをしながら彼らは立ち去る。

「有馬……なんで、ここに?」

 彼らが見えなくなったことを確認し、鷹羽くんは私を振り返った。

「ごめんなさい。少しでも力になれたらと思って、夕凪さんをつけてここまで着いて来たんだけど、逆に迷惑をかけることになっちゃって」

 もしかしたら、私が勝手にしたことで彼に不利な状況を作り出してしまったかもしれない。

「そっか……ごめん、夕凪さん放って来ているんだ。……もうちょっと待てる? プリクラだけ撮ったら、解放してくれるらしいから。ここだとあいつ等みたいなの居るから、下で待てる?」

 一階にある全国チェーンのカフェの名前を言うと、足早に夕凪さんが待っているだろう場所へと戻った。