鷹羽くんは爽やかに微笑みつつ、自分の席へと颯爽と戻って行った。いつも彼が動いている姿を見て思うんだけど、同じ人間だとは思えなくらいに動作のスマート感が半端ない。

「ねえねえ。澪。私。鷹羽くんを見た時から思ってたんだけど……もしかして、鷹羽くん、昨日の話聞いてたんじゃない? そういえば、雑誌開いた時に、彼と目が合った気がするんだよね」

 周囲を気にしている寧々ちゃんは、ひそひそ声で私に言った。

「え……どういうこと?」

「澪の、理想のタイプの話だよー! 眼鏡にあのアイドルっぽいヘアスタイルって、鷹羽くんのイメチェン。澪の理想そのまんまじゃん」

 興奮したように寧々ちゃんは、声がどんどん大きくなっていく。

 私は慌てて自分の唇に、人差し指を当てた。本人に聞かれても気まずいけど、周囲に聞かれても嫌だ。身の程知らずに何を勘違いしてるのと思われかねない。

「……ただの、偶然だよ。そんな訳ないじゃん」

 私は戸惑っている心の中の自分にも、そう言い聞かせた。そんな訳ない。そんな訳ない。落ち着け。落ち着け早とちりな私。