「あー、夕凪また来ているね」

 終業後の教室の中、帰りの準備をしている最中に、寧々ちゃんが後ろを向いた。

 あまり見たくないものを見てしまったって風に顔を顰めていた。

 夕凪さんが鷹羽くんを迎えに来たのかもしれない。

 それを見れば絶対に嫌な思いをするってわかっている私は、なるべくそちらを意識しないように筆記用具や今日出た課題なんかを通学バッグに詰め込んだ。

 夕凪さんが何をしたいかなんてわからない。鷹羽くんが私と付き合ったら彼女の失恋が確定するっていうことはわかるんだけど、脅したからって彼の気持ちが手に入る訳でもないのに。

 けれど、好きな人が誰か違う人と付き合うことを止めたいという気持ちはわかってしまう。

「二人……一緒に帰りそう?」

 なるべくなら、見たくない。そういう気持ちを察したのか、寧々ちゃんは彼らをじっと見て観察してくれたようだ。