行高は緊張した様子も動揺した様子は見られなくて、本当に? と思ってしまうけれど、こんな嘘をついて何になるんだろうと思い返す。

「混乱してる」

 それは正直な気持ちだった。だって、私のこと好きになってくれる男の子が居るなんて想像もしなかったし。

「そうだよな」

 もう一度納得するように頷くと、にやっと可愛い笑顔を見せる。

「あの鷹羽に告白されて即オーケーしないってことは、澪は簡単な女の子じゃないって分かった」

「何それ。なんだか、失礼じゃない?」

 むっとした顔をすると、行高はははっと声を出して笑った。

「誉め言葉だよ。あいつみたいな奴に告白されて……断るとか、普通は思わないって」

「好きでもないのに、そうして付き合っても彼に失礼じゃない?」

「とりあえず告白されたからで、そうして付き合う奴も多いんでない? けど……俺も、好きじゃないと付き合いたくないけど」

「私と同じだ」

「そう。気が合うね。だから、付き合おう?」

「無理」

 それは無理。行高は良い人だ。優しくて顔も可愛くて、付き合ったらきっと自慢出来るだろう。

 けど、好きになれるかというとわからないもの。

「それは残念。でも、この先は分からないだろう?」

 本当にこの先どうなってしまうのかわからなくて、何も言えなくて、私はもう一回青空を見上げた。