「うーん……進級して同じクラスなってからやけに目が合うなって思ってたかな。けど、彼が私を好きになるなんて考えられないし、ただの偶然だろうなって思ってた」

「それで眼鏡かけて髪切っての好きアピールだもんね。普通だったら嬉しいよね。問題はあの鷹羽くんってことだけだよね」

「うん……今日帰り道でね、私のどこが好きなのって聞いたら」

「……うんうん」

「僕のこと好きになってくれたら、そうしたら好きになった理由を教えるって言われた」

 寧々ちゃんは一瞬黙ると、深くため息をついた。

「……はああ」

「寧々ちゃん?」

「興味本位で突撃して、壁にぶつかった気分。ごちそうさまでした」

「え?」

「なんでもない! お腹いっぱい胸いっぱいになったから寝るね。おやすみなさい」

「おやすみなさい」

 私は画面上の終話のボタンを押して、通信アプリの通知を見つけた。

『今日は待っていてくれてありがとう。おやすみ』

 名前を見れば鷹羽くんだ。私の気持ちはまた急上昇した。

 間違いなく一軒家の二階の部屋から、屋根は超えたと思う。

 返事を書かなきゃと思いながら、何度も打ち直して、よし、とボタンを押してため息をついた。

『送ってくれてありがとう。おやすみなさい』

 そのままぽんと枕に顔を埋める。

 胸がいっぱいってこの状態のことを言うんだと、産まれて初めてそのことを知った。