寧々ちゃんはくすくす笑って、持っていた雑誌を私の方へと開いて見せた。何人かのイケメンが、こちらを見て微笑んでいる。

「ねえ、澪……どういう髪型の人が好き?」

 そう聞かれて、私は何も考えずに好感度が高そうな短髪の人を指さした。

「んー、この人かな。すっきりしてて、見た目爽やかなんだもん」

「澪って、短い髪が好きなんだね」

 へえーと納得したようにして、寧々ちゃんは頷く。

「寧々ちゃんは、どうなの?」

「私は、絶対こっちの人! そもそも、顔が格好良くない?」

 寧々ちゃんはそのイケメン達の中でも一際目立つ人を指さした。女性雑誌に特集を組まれるようなアイドルとして載っているんだから当たり前なんだけど、彼は本当に綺麗な顔をしている。

「髪型なんて関係なくない? ただ、この人の顔が好きなだけでしょ。私にはわかる」

 絶対そうだと頷いた私に、寧々ちゃんは頬を膨らませた。

「顔だけじゃないよ~。全体的に? この子はとっても良い子なんだからね! という訳で、この子だったらどんな髪型でも良く思えると思うだけで~」

 アイドル好きな寧々ちゃんが推しの美点を語り出すのを、うんうんと聞き流しながら私は頬杖をついて笑った。

 そんな良くある出来事の日常の一コマ。それがまさか、あんな風にして彼と縁が繋がっていくなんて……本当に、想像もしていなかった。